導入・分析事例

一般社団法人港区観光協会 様

おでかけウォッチャーにより実現した、観光協会発の新規施策提案〜観光動態の定量データと定性情報の掛け合わせから見えた新たな課題〜


今回は、観光人流ダッシュボード「おでかけウォッチャー」を活用し新規施策の提案を実施されている、一般社団法人港区観光協会 事務局長の茂木様にインタビューをさせていただきました。おでかけウォッチャーのデータをどのように新規施策提案に繋げて行ったのか、その経緯や活用のポイントについてお聞きしていきたいと思います。

お話いただいた方

一般社団法人港区観光協会
事務局長
茂木 春良様(写真)

インタビュアー

株式会社ブログウォッチャー
観光事業部 お出かけ未来創造グループ セールス
恒松 昇平

新たな観光施策検討の根拠となる「量・質伴ったエビデンスデータ」として

最新の観光動態を可視化するためのデータ基盤の検討

まずは貴社の事業について教えてください。

港区観光協会は港区の魅力を国内外に発信し、観光客を誘致することで地域経済の活性化を目指す団体です。具体的には、観光情報の提供や観光イベントの企画・実施、観光客の受け入れ体制整備などを行っています。また、180以上の会員がいらっしゃり、会員事業者様に対して情報提供や交流の機会などを提供しています。港区の特徴として、観光以外にも様々な目的で訪れる方がいらっしゃるので、観光協会としても観光客だけでなく「来訪者をどう増やすか」「そのために何ができるのか」というスコープで取り組んでおります。

おでかけウォッチャーを導入したきっかけについて教えてください。

元々最新の観光動態(来訪者の行動パターンなど)を捉えたいと言うニーズがあり、手法を検討していたのですが、既存のインターネット調査では工数がかかってしまうのと、調査タイミングによって回答量や、回答の偏りのない状態を担保するのが難しい側面があったため、もっと適切な方法はないかなと思っておりました。

そんなタイミングで東京観光財団さん経由でご紹介いただきまして、最初に見た時は「こんなデータが取れるんだ。これならぼんやりしていた課題感のファクトとなるような情報が取得できるかもしれない」とワクワクしましたし、とても新鮮に感じたのを覚えています。

仮説検証のため、来訪者の行動パターンまで把握可能なおでかけウォッチャーの導入を決意

その後、導入の決め手は何だったのでしょうか?

私たちとしては元々「港区は回遊性が弱い」というなんとなくの課題感がありまして、「実際に来訪者はどのように港区を回っているか」といった来訪者の行動パターンをもし可視化することが出来れば、その課題解決に向けた施策検討のファクトになるのではないか、と思っておりました。

その点、おでかけウォッチャーは「データが準リアルタイム(週次更新)であること」「人流データやスポットごと粒度でのデータなど他手段では得られないデータが得られること」「回遊性の弱さなど港区エリアのいくつかの仮説を検証するために、来訪者の行動パターンを把握したいというニーズに合致したこと」の2点で今回の我々の課題感にぴったりだと思ったため、最終的には活用を決めました。

人流データが来訪者数増加に向けた施策のエビデンスに

人流データから明らかになった港区を訪れる人の「行動パターン」

導入後は具体的にどのように活用をされてきましたか?

例えば実際におでかけウォッチャーの旅程分析を使っている中で、ある時「港区は行程最終日に来訪する人が多い」という事実がわかりました。これは、交通の入口/出口になっているためだと解釈しているのですが、であれば、出口(最終日)に港区をどう周遊してもらうかが大事なのではないか、と言うのが見えてきました。

また、実際にそんな仮説をもとに街を歩いてみると、日本人も海外の方も、みなさん大きな荷物を持っている方が多いことにも気がつきまして、であれば「行程最終日に港区で観光するためには、大きな荷物を抱えて歩かなければならない」という問題に取り組むべきなのではないか、という新たな課題設定に繋がった事例がございます。

荷物のストレス解消に向けた民間事業者との協業

その後地域で具体的な変化はありましたか?

はい、これらの分析の結果「訪問者の荷物について、羽田空港への当日配達を行う手荷物配送サービス」について、新規で区に提案することにつながりました。まだ、実施までには至っていませんが、港区にとっても区民の観光客受入意向に向けての課題解決に繋がる取組みとして、検討しています。

港区は、例えば老舗のお菓子屋さんのように、すごく素敵な場所で、知っている人は訪れてくれますが、ふらっと寄っていただける方はまだまだ多くない、というようなスポットがたくさんあります。

荷物があることは周遊の阻害になってしまうので、今回の施策が実現されれば、来訪地点の増加や消費額の向上に繋がるのではないか、と考えております。

この取り組みにも現れている通り、観光協会としては、来訪者の満足度アップに向けた受け入れ環境整備が大事だと思っています。今回の荷物の件のように、「いかにストレスフリーで観光してもらうか」という点で、データを活用して提案できたことはまず良かったと振り返っています。

データドリブンな課題抽出・仮説構築・意思決定を実現

データを武器に、能動的な課題提起をしていきたい

今後はどのような展開が見えていますか?

まずはすでに見えている兆しからですが、観光協会の役割はこれまで、インフォメーションセンターの運営委託やボランティアガイドの予約事業のように、港区側で立ち上げた観光施策の運用業務が中心でした。それがおでかけウォッチャーを活用することで、データを起点に観光協会から能動的に施策提案をできるようになってきているなと感じています。

また、施策検討の進め方にもまだまだ進化の可能性を感じています。現在ではまだ、データを様々な角度で出してみた上でそこから仮説を作り、観光協会の会員である事業者さんたちに実態を確認する…という進め方になっています。

理想としては逆だと思っておりまして、観光協会の強みである事業者さんとの関係性をもとに、事業者さんたちを巻き込みながら仮説の種となるような声をたくさん上げていただきつつ、それをデータを使って検証する、というサイクルにできると、よりたくさんのデータ・ドリブンな仮説検証が進んでいくんだろうなと思っており、そこに向けて頑張っていきたいですね。

最後に、おでかけウォッチャーの導入を検討している団体へメッセージをお願いします。

人流データは観光産業においては、まだ認知度は低いかもしれませんが、「来訪者に対してどのような施策を打てるか」という切り口において、間違いなく大きな武器になると感じています。観光産業における民間事業者さんにとっても、非常にメリットのあるデータなので、これからも積極的に活用していければと思います。

ありがとうございました。

データ分析概要

事例まとめ

  • 準リアルタイムデータで最新の観光動態を可視化。
  • 行動パターン分析により新たな課題設定を実現。
  • データ起点の施策提案で能動的な観光施策を展開。
  • 事業者との連携によりデータドリブンな仮説検証を推進。

※本記事の各種情報は、記事作成時点(2025年◯月◯日)の情報に基づいています。