導入・分析事例

一般社団法人沖縄市観光物産振興協会 様

日々の小さな疑問が地域を変える。「通過型観光」から「滞在型観光」への転換に向けたデータ活用施策とは?

導入実績

分析事例


今回は、観光人流ダッシュボード「おでかけウォッチャー」を活用し新規施策の提案を実施されている、沖縄市観光物産振興協会 事務局長の金城様 にインタビューをさせていただきました。おでかけウォッチャーをほぼ毎日見ているヘビーユーザーとのことで、具体的な活用事例と施策実現におけるポイントについてお聞きしていきたいと思います。

お話いただいた方

沖縄市観光物産振興協会
事務局長
金城 諭 様(写真)

インタビュアー

株式会社ブログウォッチャー
観光事業部
高橋 知弥 恒松 昇平

「通過型観光」からの脱却を目指したデータ活用への決意

予算獲得や周囲への合意形成のため”説明性の高いデータ”を探していた

まずは貴社の事業について教えてください。

沖縄市観光物産振興協会は、沖縄市に観光客を誘致するための活動を行っている組織です。沖縄県の中でもビーチを持たない沖縄市では、イベントを中心とした観光施策を展開しているのが特徴です。協会の主な活動としては、伝統芸能「エイサー」イベントの事務局および観光プロモーション、プロスポーツチーム(サッカー:FC琉球、バスケットボール:琉球ゴールデンキングス)のホームタウンとしての特性を活かしたスポーツツーリズム、フィルムコミッションの活動、お土産品の開発・販売など観光に関する事業を幅広く行っています。

おでかけウォッチャーを導入したきっかけについて教えてください。

元々県から提供される観光統計調査などのデータは見ていたのですが、分析しそこから市内の観光施策に活かすために、地域やスポット単位で細かくデータを取れる手段を探しておりました。

また、昨今の我々を取り巻く状況として、補助金縮小に伴う予算の獲得難易度が上がっていることや、DMO登録に必要な各所への報告資料の作成/合意形成の煩雑さが増している、という状況がありました。観光協会としては「観光協会に大事なのはKKD(勘と経験と度胸)だ」と言われていた時代もありましたが、このような状況を乗り越えていくためにも、新たな”D”、つまりデータを使って客観的な根拠を示すことだ、と思っており、この点でもデータ活用には興味を持っておりました。

そんな時に沖縄コンベンションビューローさんより、お声をかけていただきぜひ使ってみたい、と思ったのがきっかけです。

スポット単位での粒度細かい分析で宿泊数を伸ばせないか、という課題設定

その後、導入の決め手は何だったのでしょうか?

沖縄県というと県全体として観光が一大産業であるように思われると思うのですが、なかでも沖縄市は元々観光産業に力を入れていた地域ではなく、ビーチが無いという地域特性からも、客観的に見た時に県内の他地域/隣接市区町村と比べ、「THE沖縄」として観光地としての魅力もそこまで高くはなかったと捉えております。

中でもとりわけ課題視していたのが、一般的に「通過型観光」と言われる、滞在時間の短さと宿泊客数の少なさです。沖縄市への来訪者は那覇市などの他市区町村での宿泊が多く、沖縄市はもっぱら素通りされてしまっているという実感がありました。

こういった課題に対して、データを活用しスポット単位で粒度細かく「いつ」「どんな人が」「なぜ」「どこにきているのか」を明らかにすることで、何か解決策が打てないだろうか、と思い、導入を決めました。

スポーツツーリズムによる宿泊者増加施策の実施

FC琉球と地域の宿泊事業者を巻き込んだ、受け入れ観光整備とマーケティング施策の実施

導入後は具体的にどのように活用をされてきましたか?

現在進行中のものも含め色々な施策に活用しているのですが、中でも直近成果が出たのは、スポーツツーリズムの事例です。沖縄市にはFC琉球というプロサッカーチームがあるのですが、この試合イベントをうまく活用できないかと思ったのです。

具体的には、まず2024/4/24のガンバ大阪戦に訪れるアウェイチームサポーターの来訪者をおでかけウォッチャーで調べてみました。すると大阪発地の来訪者(ガンバ大阪サポーター)数が実数値と近いことを確認できたのですが、沖縄市よりも那覇市の宿泊が圧倒的に多いことがわかり、誘客までは出来ているが、宿泊者数として取り込めていないことがデータからも再確認できました。

そこからどんな施策を打ったのでしょうか。

はい、具体的には翌月2024/5/22のセレッソ大阪戦のサポーターにターゲットを絞り、2つの施策を行いました。

1つ目は「宿泊施設と観戦チケットのセットプラン造成」です。市内の宿泊事業者とも連携し、観戦チケットと市内の宿泊施設のセットプランを造成しました。FC琉球側と調整し発売前のチケットを確保したのですが、その際もデータを根拠にコミュニケーションができたので、合意形成は非常にスムーズに進めることができました。

2つ目は「SNSマーケティング」です。最初はXで通常の告知活動を行ったのですが、単に周知をしても申し込みが伸びなかったため、セレッソサポーターに向けて「ガンバ大阪を超えましょう!」のような煽り文句で告知を行い盛り上がりを演出したところ、実際にXでのリポストを複数発生させることができました。

先月比較で大阪府からの宿泊客が2.14倍に

その後地域で具体的な変化はありましたか?

4/24のガンバ大阪戦と比較して、5/22のセレッソ大阪戦の大阪府からの来訪者の宿泊客数は2.14倍になったことが、おでかけウォッチャー上でもみて取れました。全体値としてはまだまだ伸び代はあると思っておりますが、実際に数字で結果が出たことで自信にもつながりましたし、今後も活用していきたいと改めて思いましたね。

地域全体でデータを活用した観光施策による地域経済化の活性化を目指して

地域事業者のデータ活用支援への展開

今後はどのような展開が見えていますか?

先程も述べた通り、沖縄市は県内でも観光先進地域ではなかったため、まだまだ観光産業による恩恵を享受できていないと感じています。我々がおでかけウォッチャーより活用していくのももちろんですが、ホテルや飲食店などの地域事業者がデータを活用し商品開発やサービス改善につなげられるよう、マーケティング支援のような役割も担いながら、地域全体でデータを活用して観光産業を盛り上げていければと考えています。

日々の小さな疑問を集め、データで検証する、という習慣化

最後に、おでかけウォッチャーの導入を検討している団体へメッセージをお願いします。

データを活用することは一見難しく感じますが、大事なことはデータを漠然と眺めることではなく、日々の行動の中から問いを立てることだと感じています。私の場合、最初の頃は「とにかくまずは使ってみることだ」と思い、操作方法をブログウォッチャーの営業担当者さんに逐一確認しながら使っておりました。慣れてくると街を歩きながら「なぜここに人が集まっているんだろう」のような小さな疑問を集め、それをおでかけウォッチャー上で分析する、といった習慣もついてきまして、今ではほぼ毎日何かしらのきっかけでおでかけウォッチャーを見ています。ふとした疑問をすぐにその場ですぐ検証し、さらに深めていくことができるので、すごく助けられています。データはただの手段なので、起点はあくまで日々の疑問だと確信しています。こういった疑問を持った経験がある方にとっては、非常に強力な武器になると思うので、ぜひお勧めしたいですね。

ありがとうございました。

データ分析概要

事例まとめ

  • データ活用による客観的根拠で予算獲得と合意形成を実現。
  • スポーツツーリズム施策で宿泊客数2.14倍の成果。
  • 日々の疑問をデータで検証する習慣化により継続的な改善。
  • 地域全体でのデータ活用により観光産業の活性化を目指す。

※本記事の各種情報は、記事作成時点(2025年◯月◯日)の情報に基づいています。